ショコラノアール~運命の恋~
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「届かないってどういうことですか?」

「送り主さんの方は昨日の夜、発送したって言ってるんだけどね。

配送のトラブルかもしれない、
いまどこにあるか、
探して貰ってるんだけど、

途切れてしまって、
参ったよ」


「すみません」

「君が謝ることはないだろ?」

「でも、私が提案したことだから、

店長にも、送り主の長谷川さんにも、

ロウソク工場の町田さんにも無理させてしまったのに、

もし、間に合わないようなことになってしまったら……」


「大丈夫、なんとかなるよ。

もし間に合わなかったら、

普段通りのものを持って行って貰って、

あとから届けて驚かせるって手もあるよ?」


「でも……」

単身赴任のおとうさんが、

5才になる息子さんのために、

ケーキを電話で注文の時、

出来るだけ喜ぶような形で渡して欲しいと

のオーダーがあり、

以前雑貨屋さんで特注した、

メッセージ型のロウソクを持ち込んだお客様がいたことを思い出して提案した。

先方は乗り気だったのだけれど、

注文日が近かったので、

 メッセージの基盤の加工がギリギリだったが、

誕生日当日、

一緒に祝えないおとうさんが、

せめて無理してでも息子さんを喜ばせたいという気持ちをなんとかしてあげたくて、


あちこち当たってこの日に間に合うように手配する事ができた。


ケーキの準備は整っているのに、

午前中に配達されるはずのメッセージロウソクが届かない。


どうしよう。

このままじゃあこの日のために準備した送り主のおとうさんの気持ちも、

うちの店の信用までも台無しにしてしまう。







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