YUMERI〜女のコにはユメとキボウがあるのだ!〜
希望梨は視線の意味を初めて知った。
「だっ、誰がそんな…」
気分よくデザートのプリンを食べていたのだが、スプーンの手が止まる。
「偶然通り掛かって写メ撮った人がいてね、私が見たブログが最初じゃなくて色んな所から転送されたみたいで…。大元のブログは分からない」
りおは紙パックのコーヒー牛乳をきゅううっと飲んだ。
「あれ、ゲームセンターの写真みたいだけど…」
涼子は手作りの弁当を上品に食べている。
「あれはね、伊坂君と出かけるはずだったの。でも、伊坂君が都合悪くなって…」
そして映画の合間にゲーセンに寄った事。
パンダの縫いぐるみが可愛くて、非売品だから嬉しくてつい抱きついてしまった事…。
親友二人に説明した。
「…まぁ、抱きついたのはまずかったよね」
りおはコーヒー牛乳のパックをテーブルに置いた。
「……」
希望梨は力無く食堂の天井を見上げる。
「希望梨ちゃんの本当の気持ちはどうなの?嫌いなんだったら、笠倉君が代理に来た時点で断るんじゃない?」
涼子は箸を箸箱に納めてゆっくり希望梨を見た。
「…嫌いじゃない」
今日のスペシャルは天ぷら定食だったんだ、とぼんやりホワイトボードに視線を移した。
食堂のおばさんが書いたものなので、カフェのように小洒落た書き方ではなく、生真面目に丁寧にメニューと金額が書いてある。
「…好きでもない」
視線を落として、食べかけのプリンのカラメルソースを見つめた。
「じゃあ…」
りおと涼子が同時に言ったのだが、
「よく分からない」
希望梨の答えに、りおと涼子は顔を見合わせた。
「出会いからして最悪だったし。親が同じ商店街で店してるから否応なしに幼なじみになってるし。幼なじみってロマンチックな材料になるんだろうけど、そんな風に考えた事なかったし。なんかいつの間にか周りが変わっていく感じ。そりゃ幼なじみだから話は合うし、一緒に居て気は楽なんだよ」
そこまで言って、親友二人を見た。
食堂にいる人の耳が皆ダンボになっている気がした。
「楽なの。無理しなくていい。言いたい事は言う。喧嘩も派手にする。稔が居なかったら寂しいだろうとは思う。でもこの感情が何なのかは分からない」
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