YUMERI〜女のコにはユメとキボウがあるのだ!〜
「こないだは俺から誘っといてごめん」
伊坂の言葉に希望梨は大きく首を横に振る。
二人は食堂から離れて、中庭にいた。
あちこちにカップルが居て、希望梨は居心地が悪かった。
中庭は、公認のカップル達が昼休みに集まる場所なのだ。
もちろんここの生徒なら誰でも立ち寄れるのだが、いつの間にかカップル御用達のスペースになってしまった。
「伊坂君の将来がかかった大切な日だったんだから気にしないでね」
希望梨は伊坂を見上げて微笑んだ。
「……結局実現しなかったけどさ、俺が何で君を映画に誘ったのかは分かるよね?」
伊坂は真っ直ぐ希望梨を見た。
希望梨は息が出来ないような気持ちを味わった。
「あの…えと…うん」
何とも歯切れが悪い答えになった。
「…単刀直入に聞くけど…笠倉の事好きなの?」
「………」
自分の優柔不断さを呪いながら固まった。
気持ちを上手く表現出来ない。
「…笠倉がさ、部活中によく君の話するんだよ。明るくて、元気がよくて。笠倉とは偶然部活が一緒なだけで、特別親しくしてないんだ。だけど、他のやつに君の話をしてるの聞いてたら、どんな女の子なのかな、って興味がわいた」
伊坂がそこまで言うと、予鈴が鳴った。
「…で、笠倉と同じクラスだって聞いたから、休み時間に教室迄行った。去年の夏だったかな」
予鈴に急かされて、カップル達は校舎へ急ぎ一人二人減って行く。
「初めて君を見て、あぁ、これが一目惚れなんだなって思った」
希望梨は金縛りにあったかのように動けなかった。
「笠倉も君の事、好きなんだと思う。でも、俺は君にきちんと伝える」
希望梨は背の高い伊坂をただただ見上げた。
「君が好きだ、俺と付き合って下さい」
その時、本鈴が鳴り始めた。
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