ふわり、さらり
「今、付き合ってる人いるの?」
笑みを浮かべてそれだけ、聞いた。
「─はい」
「どんな人?」
「大きくて、包容力のある人ですね」
─ぎし。
椅子が軋んだ音を立てる。
そっか
また空を仰いだあと、彼はそれだけ呟いた。
瀬川さんへの私の感情は、忘れたい好きだった。
ひたすら苦しくて、この感情をうまくコントロールできない自分も、この感情を抱かせるこの人も恨めしかった。
今だってあの頃に満たされなかった喪失感は残っている。
でもそれを過去にしてくれる人に巡り合った。
今出会ったその人に感じる温かい限りない感情は愛だ。
彼を想うだけでなんでもできる気がする幸福を感じている。
「瀬川さん、私子供産みます」
唐突な言葉に瀬川さんは目を丸くした。