ふわり、さらり
「…あぁ、はい」
そうだ。
私が彼といた時、まだ珈琲は飲めなくていつもカフェオレを飲んでいた。
これまで気づいていなかった変化に、二年の重みを感じる。
「仕事どう?」
「最近やっと楽しめる余裕が出てきました」
「余裕、ねぇ…」
「その疑わしげな表情ヤメてください」
─ぎし。
オープンカフェの一席。
向かい合う彼は空を仰ぎ見るようにアンティーク調の椅子にもたれ掛かった。
「そっちこそどうなんですか?」
「俺?俺か…」
まだ空を見ている。
「相変わらず、だよ」
そう言ってから、私を見てゆるく笑う。
返事の前に間を取る癖。
出会った頃の私は、よく考えてから返事をする誠実な人だと思っていたけど、すぐに気づいた。
ただ言いあぐねているだけ、それなのにまるで
考えてます
って装いを取り繕える彼は得をしてる。
無意識かもしれないけれど。