声を聴いて
「しつこい男は嫌ですか?」
 有栖川鈴亜side

 春が過ぎ、暖かくなってきた6月中旬。というか今日は暖かいというよりむしろ暑かった。まだ肌寒いかなと考えカーディガンを着てきたことを心の中で後悔する。
 ……っつうか!!

(いい加減にしてよこのクソ後輩っ)
 全力で歩いている私の後方、そこには見目麗しい後輩と思われる男子がついてきていた。それはもう……ストーカーみたいに。

「あ、先輩今酷いこと考えてるでしよ。嫌だなぁ、ストーカー何かじゃ無いっすよ?」
(エスパーか貴様っ)

 私の全力というのは何と虚しい事なのか。あっさりついてくる後輩に心の中で毒づきながら、それでも横にいる後輩は見ずに目的地のみに意識を集中させた。
 ヤツの方を見たら、私は終わる。向こうは喜び、調子に乗ると思われるから。調子に乗ったら何かを仕出かすのがこいつの悪癖。責任をとらされるのは何故かこいつの監視係に任命された私だというのに。

(ちくしょう、何で私がこんな目に……)

 ため息をつきつつ、空を見上げる。空はあの日と相も変わらず真っ青だった。
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