イケメン様の隠し事
「え、ちょ…皆、何でそんな話になるのかな…」
『だって何か、見てると淳は優ちゃんが好きで、でもたか君と優ちゃんは両思いだから自分の恋を諦めてたか君と優ちゃんをくっつけた……みたいに見えなくもない!』
うん。
何かいろいろ無理やりすぎるよ。
「違うからね?俺、好きな人いるからね?」
『え?』
「ん?」
『好きな人!?』
あー。
これは逃げないといけない気がする……
ってか話そらそう!!
「あ、いや、えっとー。俺は皆大好きだからさ!ははははは…」
『………なぁんだ!びっくりしたぁ!』
『だよね、淳が誰かと付き合うとかありえないし!』
まぁ、付き合ってますけどね?
ホモって言われるから、隠します。
俺的には言われてもいいんだけど、涼太に迷惑かけるしな…
「と、とりあえずさ!皆、準備しよ?」
『もー終わってるよ!w』
「あ、ごめん」
そして、本番当日。
いろんなお客さんが来ていた。
チャイナ服を着て男の目を惹いている優と、ツインテールのウィッグをかぶらされてる俺。
「優、俺お前の引き立て役になってる気がするよ…」
「は?あんたバカなの?そんな顔してないでいつもの王子スマイルでいけばいいのよ」
王子スマイルで接客したらかっこ良く…なっちまうじゃねーかよ。
そんなことを思いながら、俺は優に言われたとおり、王子スマイルで接客を始める。
すると効果は抜群。
結構いい感じになってきた。
『淳ー、もー休憩入っていいよ!』
「おっサンキュー」
えーっと、涼太はどこにいるんだ?
俺は廊下を見渡した。
ん?
何か女子がめっちゃ群がってる……
そう思ってそこに行き、様子を確認すると貴也と涼太でした、はい。
「あ、淳ちゃーん!!会いたかったー!」
「おっ淳!お前…ププっ女装も似合ってるな!」
何だこいつら…
「俺は何やったってかっけーんだよ!涼太、俺休憩入ったからさ、どっかまわってこようぜ?客引きもやんなきゃだからさ!」
「うん!分かったっ」
それにしても………
女子が多すぎる!!
俺じゃなく涼太に群がってんのがまたムカツク!
しかも、女子が涼太を囲ってるせいで距離遠すぎるし……
俺も男の格好すればよかった……
シュン…としょげていると、誰かに手を引かれる。
は?と思って腕の主を見ると涼太。
「ごめんね、僕の彼女が妬いちゃうからもう行くね」
キラッキラの王子スマイルで俺の手を引きダッシュする。
まてまてまてまて!
足の長さ違いすぎるから追いつけねー!!
とりあえず今は体育館裏。
息が乱れて何も言えません。
「はぁ…はぁ。おま、ふざけんな…ダッシュするなんて……きいて、ねーぞ!」
「ごめんごめん。淳ちゃんが寂しがってたからつい」
きゃはっ的なノリで言ってくる涼太。
可愛くねーわ。
キモい。
「ってか、別に妬いてねーし」
「ふーん。妬いてないんだー?すんっごくつまんなそうな顔してたのに?」
「あ、あれは!その…あ!お前だけモテてるのが気にくわなかった!」
「そんな取ってつけたような理由言われてもねぇ…」
取ってつけてねーし!
ホントに最初の方思ってたし!
それに……
「誰だって嫌だろ。1人で取り残されんの…一緒にまわる奴目の前にいんのにさ。」
「淳ちゃん可愛い!おいで!」
手を広げてめっちゃ尻尾を振る犬のような笑顔。
「行ってやってもいいけど、どーしようかな?」
「まぁ来ないなら僕から行くのみ。」
何でだよ!
少しはシュンとしろよ!
………こんなところで抱きつかれてるの誰かに見られてたらどうしよう。
ま、いっか!
「涼太、腹減った。焼きそば食いたい。」
「うん、じゃぁ手繋がせてくれたら行ってあげる。」
「アホか?アホなのか??あのな、学校では一応俺男なの!わかる?男同士で手繋ぐの!?」
「うん!」
「即答すんな!我慢してろ!後夜祭の時何でも好きなようにさせるから!」
「え?」
「は?」
「それ、ホント?」
「あ?当たり前だろ。言うこと聞いてやるよ」
「ふーん。オッケ。」
はぁ。
それから、俺らは色んなところをまわった。
外の縁日に行ってみたり、お化け屋敷に入ったり、風船を作ってもらったり…
とりあえず、楽しかった。
で、今は片付けの最中。
俺はごみ捨てに行っていた。
「くっそ……スカート歩きにくい………」
今更だがスカートに全くなれない俺。
やっとのことでゴミを外に捨て、教室まで帰る。
机を直していき、後は後夜祭を迎えるだけ。
後夜祭では皆が校庭に集まり、花火が上がったり、自分達も花火をやったりできる。
縁日で余った食材などを食べたりもできる。
だから毎年皆楽しみにしているのだ。
そんな中俺ら4人は教室に残り、そこで花火などを見ていた。
「淳たち空き教室いきなさいよーっ。あたしたち2人っきりになれないじゃない!」
「そんな寂しいこと言うなよー」
「淳ちゃん空き教室行こうよー。何でも好きにしていいって言ったじゃん!」
「え、淳お前そんなこと言ったのかよ?」
「あぁ、言ったよ?だから俺パシリに使われる気でいるもん。」
「谷君どんまい。淳はそんな気さらさらないみたいよ…」
「ですよねー。僕がバカだったみたい…天然なのかな、淳ちゃんは…」
何言ってんだこいつら?
「もー皆で過ごしましょ?」
「おうよ!あ、俺お菓子をあるんだよなー」
「ごめん、僕淳ちゃん貰ってくから、2人は2人で過ごして?」
そう言って涼太は俺を担ぎ歩き出す。
「はー!?俺歩けるし!おーろーせ!」
「淳ちゃん軽すぎ。ちゃんとご飯食べなさい。」
「食ってるし!」
「お幸せにねーん」
はい。
皆様が思ってる通り、空き教室へ連れて来られましたね。
でもね、学習する淳ちゃんはそう簡単にキスはさせません!!
「いや、そんな無理矢理はやらないからね?」
「ってか、お菓子食べたかった。」
「我儘言わないのっ。花火見えるんだからいいでしょ?」
「はーぁ。」
「なーにそのため息。ちょっと心外なんですけど。」
「べつに…………………ん。」
俺はそっぽを向きながら涼太に手を差し伸べる。
「え、何?手怪我でもしたの?」
「はぁ?もーホント意味わかんない。」
それでも首を傾げて俺の方を見る涼太。
くそ。
お前だって鈍いじゃねーかよ。
それとも何だ?
わざとか?
わざとなのかこれ?
「さっき体育館裏で手繋ぎたいって言ってただろ。恥ずかしいんだから察しろよな……」
「あ……そっか…ふふっ」
「何笑ってるわけ」
「いや、淳ちゃんが可愛くて、ついっ」
「可愛くねーし。ってか、手疲れるんだけど。繋ぐならさっさと手取れよな。」
「はいはい」
涼太はクスクス笑う。
前も言ったけど、やっぱりこの笑い方と声のトーンが好きだ…
「花火…綺麗だね」
「あぁ。夏に4人でやっときゃよかったな……」
「だね…」
最初の方は涼太との沈黙が耐えられなかった。
気まずくて、その空気が好きじゃなく、俺はさっさとコイツから離れたかった。
でも、今は、こんな沈黙でも愛おしく感じる。
たった2、3ヶ月しか一緒にいないのに、この沈黙にも耐えられる。