笑わないオトコ【短】
「あのさ、徹くん。言うけど、彼女みたいな子いないよ?」
「どういう意味だ」
「こんな無愛想でサイテーな上司を“好き”だなんて言ってくれる子は、他にいないって言ってんの」
「お前なぁ……」

徹は、溜め息を吐くと首を弱々しく横に振った。

「徹くんは、このままずーっと一人でいいわけっ!?」
「お前には、関係のないことだ」
「孤独死だよ、コ・ド・ク・シ!!わぁ、かわいそうな徹くん…」
「勝手に決め付けるな」

もうこいつとは、話してても時間のムダだと感じた徹は席を立った。

「彼女のこと!ちゃんと、真剣に考えてあげなよー!!」

休憩室のドアが閉まる直前、そんな声が徹の耳に届いた。

「真剣って…。どうしたら、いいんだ…。さっぱり、わからん」

部署に戻る徹は、そんな独り言を呟きながら一人、廊下を歩いた。
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