笑わないオトコ【短】
「まだ、帰らないのか」

徹が休憩から帰ってきて、数時間。

終電の時間が、近付いていた。

それでも結衣は、手を止めようとはしなかった。

そんな結衣に、徹は思い切って声を掛けたのだ。

「明日、休みなので。主任は先に帰っていいですよ?戸締り、ちゃんとしておきますから」

いつもはニコリと微笑む結衣だが、今日はニコリともしない。

それどころか、目も合わせない。

そんな結衣に、徹は少しだけイラッとした。

「あまり、詰め込み過ぎてもよくない」
「別に、詰め込んでません」
「……いいから、帰るぞ。支度しろ」
「ちょっ…!痛いですっ、主任…!!」

徹は腕を掴むと、そのまま力任せに結衣を引っ張り上げた。
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