笑わないオトコ【短】
「だったら、早く支度をしろ」
「わ、分かりましたからっ。離してくださいっ!!」
「あれれェ~?お取込み中だったぁ?」

もう二人しか残ってないと思っていた中、冷やかしのようなそんな声がした。

見ればドア付近で腕組みをしながら、ニヤついている真也がいたのだ。

「徹くん、会社で押し倒そうとか、なかなか強引なやり方だねぇ」
「ば、ばかやろう!ど、どうして俺が…。そんなことするはずないだろ!」
「ふぅん、そうなんだ。ま、いいや。それより、結衣ちゃん。今度ゴハン行かない?」

怒る徹を軽くあしらうと、真也は結衣に声を掛けた。

「え、はぁ…。別にイイですけど」
「ほんとっ?じゃぁ、メアド教えてよ」
「あ、はい」

結衣は真也に言われるまま、携帯を取り出した。

「石本、帰るぞ」
「え、主任!?ちょっと、今……」
「うるさい」

徹は携帯を操作しようとしてた結衣の手を引っ張ると、そのまま無理矢理廊下に連れ出した。

「まったく…。徹くんは、こうでもしないと素直にならないんだから」

そんな真也の声は、徹には届かなかった。
< 8 / 12 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop