私の心を彩る君
そしてバスが来て、私たちは乗り込んだ。
中に入ると誰もいなくて、1番後に二人並んで座った。
それなのに、なぜか七つ目のバス停に着くまで、お互い言葉を発することはなかった。
圭人君は何か聞きたそうな顔をしていたけど結局私に何も聞くことはなかった。
もしかしたら先生と何を話していたのか聞きたいのかもしれない。
バスを降りると、圭人君が私の右手をそっと包んだ。
「はぐれるといけないから。」
そう言って少し耳を赤くしていう彼に、私は嬉しい思いと共に罪悪感を感じざるを得なかった。
私は彼に大きな隠し事をしている。
いつも傍にいてくれて、優しくしてくれて、助けてくれる彼に、罪を犯しているような気がしてならなかった。
どうして私は何も言えないんだろう。
「海、大丈夫?もしかしてバスで酔った?」
考え込んでいると彼がすこし屈んで私の顔をのぞき込んでいた。
「あっ、ううん。大丈夫。平気だよ。」
そう言って彼に笑顔を見せる。
「……そっか、じゃあ行こうか。」
そうして無事に南京錠を買うことができた。