私の心を彩る君



そう聞くと、その人は目を丸くして「何言ってるのよ。」と、呟く。


「私はあなたのお母さんよ?」


「お、かあさん?」


ズキッ


「いたっ。」


また頭に激痛が走った。


お母さん?思い出せない。でもあの人は私のお母さんって言ってる。


「染谷さん、大丈夫ですか!?」


そう言っておじさん先生がさらに近づいた。


「思い出せなくて。思い出そうとすると、頭が…。」


まだ痛くて眉間にシワがよってしまう。


「…少し質問させて下さいね、あなたの名前は?」


「染谷海です。」


「住所は?」


「東京都〇〇区××××。」


「今日の朝ごはんは何でしたか?」


「えっと、ご飯にお味噌汁…あとは卵焼きだったと。」


そう言うと、先生はチラッと母と言った人に目線を送って、その人は頷いた。


「じゃあ、ご両親のお名前は?」


「母は染谷…あれ、染谷…なんだっけ。父の名前…すみません、思い出せません。」


「お友達の名前は、誰でもいいので教えてもらえますか?」


「友達……顔も、名前も…思い出せません。」


どうして?この年なのに友達がいないはずない。両親だって、いたはずなのに。


いたはずだってことだけ覚えてて顔も名前も分からない。


おかしい。怖い。



「じゃあ最後に、このボールペンでこれに自分の名前を書いてみてくれるかな?」


先生はそう言って3色ボールペンとメモ帳を私に手渡した。


何でそんな簡単な事を?と疑問に思ったが
右手でカチッとボールペンの先を出し、"染谷海"と書いて先生にそれを返した。


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