オトナの女


残業後の、ディナーの帰り。

折角の金曜なのに、私を送る為に見なれた道を、先輩は、いつもの様に隣を歩く。


私……バカみたい。

この後の展開が簡単に予想できて、思わず俯いた。

普段は気にもとめないランジェリーも、上下セットのセクシーなデザインを買い揃えたのに。それらの、いわゆる勝負下着は、出番がないままタンスに落ち着いていく。

スカートもミニにしてるし、全身の無駄毛処理をして、スベスベにしている。

いつでも、その時がきてもいい状態なのに、その時がこない。

男性は、そういった欲求が溜まると、はかずにはいられないと聞くけど……
私とは約一ヶ月半、そういった事がないわけで。

もしかして、他に解消してくれる相手がいるんじゃないかと、先輩を疑ってしまう自分がいる。

私が初めてだから?
色気がないから?

こんなに、悩むくらいなら、本人に聞けばいいのに。臆病な私は、先輩に聞くのが怖い。



でも……。



今日は、最終兵器を持ってきた。
折角の金曜日。かけるなら、今しかないよね?


「あ、あの!せ、先輩!」

思わず立ち止まり、繋がれた手をキュッと掴んだ。


「今日は、金曜ですよね?」

「ああ」

「明日も、明後日も私達オフですよね?」

「?……ああ、そうだけど」

「せ、先輩!だから、あの……」

「?」

『ふ、ふ、二人で、ゆっくり……』

「?悪い、声小さくて聞こえない」

そう言って、顔を近づける先輩。


駄目だ!恥ずかしくて言えない……!


どうしよう……。


「あ、ああ~……な、何だか急に目が回って……!酔ったみたいです!先輩、どっか休めるとこないですか?フラフラします!」

「酔ったって……アルコール頼んだっけ?ひなのはいつもジュース……」

「あ、あれ!アルコール入ってたのかも~」

「でも、何処かって……この辺だとラブホしかないだろ?家まで我慢でき……」

「できません!」

私は、強引な手を使い、何とか先輩をホテルに連れ込む事に成功した。




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