オトナの女
先輩に肩を抱き抱えられたまま、私は魅惑の一室に足を踏み入れる。
やわらかなピンクの照明。見たこともない程大きくて、上品なベッド。
「すごい……」
まさに此処は、妖艶な雰囲気で、私はハッと我にかえった。
「……ひなの?」
しまった!この後の展開を考えてなかった!
「せ、先輩!私、気分転換に、ちょっとシャワー浴びてきますね……」
何か言おうとした先輩の言葉を、遮るように、私は慌てて身体を離すと、逃げる様にバスルームに飛び込んだ。
先輩……絶対不審に思ってるかも。
大きなジャグジーにブクブクと浸かりながら、念入りに最後のチェックをした。
そして、ポーチから、最終兵器をそっと手に取ると、首筋や、胸、手首、股にと全身に吹き掛けた。
甘いけど、甘ったるくなくて、どこか爽やかさが感じられる心地良い香りが、私をふんわりと包み込む。
特別な配合で作られた、男性を虜にする魅惑の香水。
いろいろな雑誌で取り上げられていて、興味をもった私は、藁にもすがる思いで購入した。
まるで、おとぎ話に出てくる魔法使いが作ったホレ薬。
私にも魔法をかけて欲しい。
エロイ女になる為に!
そして、先輩……王子さまとラブラブになる為に!
私は、真っ白でなめらかなガウンを纏うと、そっと先輩が待つ、ベッドに向かった。