オトナの女
「あの……先輩……」
バクバクと音をたてる胸をおさえながら、毛先が濡れたヘアーを慌てて整える。
椅子にはジャケットがかけてあって、ベッドに腰掛けた先輩は、小さく両手をひろげ私を誘う。
そして、すっぽりと背中から腕を回し私をおさめると、優しくキュッと抱きしめた。
「酔ったなんて、ウソなんだろ……?島田に聞いた……。前から、気付いてはいたけど、そんなに不安にさせていたなんて、思ってなかったから、ごめん……」
私は、言葉の変わりに、ううんと首をふる。
「ひなのが、初めてを俺に捧げようとした時。絶対にこの娘だけは、大切にしようと思った。俺なんかが、簡単に奪ったらいけないって……我慢してた」
やっと気持ちが届いたんだ……。
そして、思いもよらずに、聞けた先輩の本音。
まさか、先輩がそんなふうに思ってくれていたなんて、考えてもみなかった。
ううん。寧ろ、そんな先輩を疑ってさえいたのに……。
そう思ったら、言葉がつまって。
私を包むその腕を、キュッと両手で抱きしめながら、もう一度小さく頭を横にふった。
すると、不意に先輩の頭が肩に触れ、首筋に唇を近付ける。恥ずかしさに、耳がボッと熱くなるのがわかった。
「せ、先輩……」
「ひなの……なんかエロイ匂いする」
そう聞こえた瞬間、先輩の手がガウンの隙間から進入してきて、首をつたう唇の感覚に、私は思わずキュッと瞳を閉じた。
やだ……ドキドキが止まらない!!
そして、とうとう私は押し倒され、視界は天井にひっくりかえった。
片手でワイシャツを外しながら、上から見下ろすように見つめる姿に、私の顔は炎上状態。
やんわりとしたピンクの照明が、更に先輩の色気を演出した。