それだけで、キセキ。
おでこにキスして、爽太が微笑む。

トロンとした寝ぼけ眼が可愛い。

そう思ったのも束の間。

今度はおはようのキスをして、ふざけたようにギュっと抱きしめる。



「痛いよぉ。」

「だって、ギュってしたいんだもん。」

「ふふふ.......もう。」

「ねぇ、今度、一緒に海行こうよ。」

「海?」

「うん。可愛い水着買って。」

「え?..........うん。」



正直、迷う。

爽太にしてみれば何の気なしに言った言葉だろうけど、微妙に崩れ始めたボディラインに怯えながら生きているアラサーの私には、それは少し勇気のいる選択だ。

行きたいけど、だいたい可愛い水着ってどんなのを言ってる?

まったく期待に応えられる気がしない。



「乗り気じゃない?」

「え?」

「何か、あんまり嬉しそうじゃないから。」

「そ、そんなことないよ。爽太といろんな所行ってみたいもん。」

「海、嫌い?」

「ううん、そうじゃないけど.......。」
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