あの夏のキミへ
すると突然肩からズルッと田川の手が離れ、ポケットから真っ白なメモ帳とボールペンを取り出し、サラサラとなにかを書き始めた。

あまりの衝撃に俯いたままのわたしにはその行動なのか考えつかない。

というか、考えられなかった。

しばらくするとビリッとメモ紙を破る音が聞こえ、その紙をわたしの手の中に滑りこませた。

力なく紙を覗き見ると、蓮が入院しているという病院名と部屋の番号が書かれていた。

字は、震えていた。

そのまま田川の顔を見上げると、悲しい顔で「いってやれ」、とだけ言った。

それから1、2秒も経たないうちに、わたしは職員室をいままでにないほどの勢いで飛び出した。
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