あの夏のキミへ
頭の上に乗っかっているタオルは真っ白で、甘い香りがした。

………聞いてみようかな

ゴクリと唾を飲み込み、心の中でよし、と決心した。

「そういえば、あなたはどなたのお見舞いに来たのかしら?」

…先をこされてしまった。

さすがだ。

「……ぁ、の…」

「ん?」

「み……水野蓮って人…ここに入院してますか……?」

「あ、水野くん?いるわよ」

「……ぁぁ…」

看護師さんから聞いた瞬間、今まで我慢できていたわたしのなかの何かが切れた。

途端に鼻の奥がツーンとして、頬を伝う温かいものを感じた。

「えっ、あ、ちょっ…どうしたのっ」

看護師さんは突然の涙に焦りだした。

それは無理もないよね。

でも、わたしの頬を次々と伝っていく涙は止まることを知らない。
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