あの夏のキミへ
「…あなたは？」

「わたしは…西田光」

わたしが名前を言い終わると、伊勢崎さんの顔からはすぐに微笑みが消えた。

「じゃあ、光ちゃん。水野くんに…会う？」

……………………。

一番思い出したくなかった事実。

本当は目覚めた瞬間から思い出してた。

でも、受け入れたくなくて思い出していないフリをしてた。

「っ…」

もうそのフリは出来ない。

「なにがあったか話してくれる？心のケアもわたしの仕事だから」

優しくて、温かい口調だった。

「…わかりました……」

わたしは全てを話した。

自殺未遂のこと、蓮のこと、いじめのこと、母親のこと、海に行ったこと

全て全て話した。

話しているうちに生理的な涙が出てきて頬をぬらす。

「…ｸﾞｽｯ…自分が、情けないです…。いじめや母親のことなんかでヤケになって…蓮に死にたいだのなんだの、たくさん言っちゃった…わたし、こんな弱い自分がイヤです……現実から逃げていた、醜い自分が…。」

これが、わたしの気持ち。

今まで、誰にも話したことのなかった、本当の気持ち。
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