あの夏のキミへ
わたしは小道に降り立つ。

道の脇に生えている背丈の低い草花たちは塩を含んだ風に気持ちよさそうに吹かれている。

小道の先には海が広がり、蓮は待ちきれずに砂浜でこっちを向いて嬉しそうにしている。

青い海と空をバックに立つ蓮は更に美しく見える。

わたしも小道を越えて砂浜に足をつけた。

サクッという小さな音とともにわたしの足は真っ白で汚れのない砂浜に沈んだ。

「キレイだな」

「…ん。」

蓮は波が押し寄せるギリギリのところまで歩いて、再びこちらを向いた。

「光!入ろうぜ!」

「はぃ?」

連はにっと笑って靴と靴下を脱ぎ捨てる。

わたしのよりいくらか大きなスニーカーが音もなく砂の上に転がる。

ズボンの裾をまくり、光も来いよ!と叫んだ。

入るって…まさか海に?!

わたしが唖然としていると、蓮はなんの躊躇いもなくチャプっと海に足をつけた。
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