あの夏のキミへ
さっき通ったのと同じ道をひきかえす。

「おばさん優しかったな」

「ん。」

「飲み物もあってよかったな」

「ん。」

蓮が一方的に話してくる。

なんて返していいかわからなかったので、また例の返事で流す。

ふと上を見ると、いつの間にかさっきまでオレンジ色だった空が黒に近い灰色のような色で支配されていた。

わたしが歩きながら空を見上げているのに気づいた蓮も、歩きながら空を見上げてみていた。

「…今日は天気よかったし、もう少ししたら星が出るかもな。特に、ここは田舎だからよく見えると思うな」

「ふーん…」

それ以上の会話はなく、行くときよりもゆっくりと歩いて海に戻った。
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