あの夏のキミへ
電車はゆっくりと動き始める。

わたしは急いで窓を開け、最後の潮風をあびる。

蓮もわたしの横の窓から顔を出して、名残惜しそうに海を見つめている。

海は昨日から1秒も時がたっていないかのように平然と、変わらずに揺れ動いていた。

10分ほどすると、海の景色は途絶え、だんだんと遠ざかっていく。

慣れてしまっていた潮の香りも薄れてしまい、鼻の奥がなんだか物足りない。

太陽も、海での照り方とは一変したかのように、ジリジリとする嫌なものに変わった気がする。

太陽はどこでも同じ1つのものなのに、場所によってこうも違うのかと驚いてしまった。
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