あの夏のキミへ
…昔、離婚する前は、とてもキレイな母親だった。

さらさらなまっすぐに伸びた黒髪

わたしの憧れだった、白く、整った顔

165センチほどの、細身の体

洋服は、なんの飾りっけもない、本人お気に入りの薄水色のワンピースをよく着ていた記憶がある。

でも今の姿といえば…

金色に染めまくったであろう傷んだ髪

厚ぼったい化粧が施された顔

細身の体を覆う派手な洋服と安っぽいアクセサリー。

なにからなにまで昔と違っている。

もう見慣れたはずなのに、やっぱりそんな姿を見ると、ふつふつと怒りがわいてくる。

「またおとこ、みつけなくちゃねぇー」

そういって母は気持ちよさそうに床に転げ、しばらくすると寝息が聞こえてきた。
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