あの夏のキミへ
ふいに窓から差し込む光で目を覚ました。

昨日はあれから意外とすぐに眠りに落ちたようで、気づくと蓮と海に行ってから15回目の朝が訪れていた。

のそりと布団から起き上がり、背伸びをする。

時計を見ると、針は10時を指していて、もっと早いかと思っていたわたしは思わず"えっ"と声を漏らした。

それから、いつもと変わらずに着替えを済ませ、居間に足を踏み入れると、なにかを踏んづけそうになった。

慌てて床を見ると、寝てしまったせいですっぽりと抜け落ちていた昨夜の記憶が一瞬にして蘇った。

スースーと気持ちよさそうに横たわる母。

わたしがかけたタオルケットはほとんどクチャクチャになっておらず、寝返りもうたないほどに熟睡しているのが伺えた。

このままお母さんが起きたらどうしよう。

わたしが小さい頃のお母さんは、ホントのお母さんだと思う。

でも今のお母さんは、すっかり変わってしまって、わたしの大好きなお母さんじゃない。

正直、一緒にいたくないと思った。

なのでわたしは、散歩がてらに団地の公園にでも行くことを思い立った。

でも、この外出がきっかけであんなことになるなんて…この時はまだ、知る由もなかったんだ。
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