あの夏のキミへ
それでもまだ足は動かないままで、動いて、動いてって祈っていた。

…次の瞬間、腹部に強い衝撃と痛みが襲った。

「………っっ!!!」

わたしは反射的にお腹を手で押さえ、声にならない叫びをあげる。

どうやら田中さんのパンチを食らったようだ。

背の小ささからは想像もできないくらい強くて躊躇いのないパンチ。

「キャハハハハハハッ」

三人の高笑いが耳に突き刺さってくる。

同じ人として、どうしてこんなことができるのだろうか、と不思議で不思議でしかたがない。

しかし、それを考える暇もなく、背中や腰、足といったあらゆるところに容赦なくパンチや蹴りが飛んでくる。

目からは生理的な涙が流れだし、しまいには突き飛ばされて地面に叩きつけられた。

地面に打ち付けられた部分が燃えるように熱く感じ、それと同時にじんじんと言いようのない痛みがはしる。

「いっ…………たぁ、…やめてぇ……」

頑張って声を絞りだす。
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