あの夏のキミへ
わたしは階段を最上階まで一気に駆け上がる。

しばらく駆け上がってなかったからか、意外とすぐに息が切れてしまった。

やっとの思いで上りきった頃には、もうヘトヘトだった。

そして、またあの日と同じように屋上のドアを開ける。

開けると、全てあの日と同じようにというわけにはいかなかったが、やっぱりあの日と同じ夏の匂いがした。

その匂いは雨のせいで微かに湿っていて気持ち悪い。

屋上のコンクリートのくぼみにはいくつもの水たまりができていた。

しかし水たまりをよけながら屋上の縁まで行く頃には既に足の裏はベチャベチャになっていて、気持ち悪さが更に増した気がする。

準備は整った。

…あとは、重力に身を任せてここから落ちるだけだ。
< 85 / 135 >

この作品をシェア

pagetop