桜*フレーバー
なに? なんなの?

突然告白してきたかと思ったら、いきなりキスしようとしてくるし。

キスを拒んだら、キレて、あたしのこと無神経だとか言い出すし。


部屋の奥まで戻ろうと歩いているうちに、なんだかどんどんムカついてきた。


さっきまでふたりで座っていたローテーブルのそばに膝を抱えて座り込む。


本気なのかな……?

さっきの怜央の表情……とても冗談を言っているようには見えなかった。

だとしても、12年だよ?
12年間、ずっとそばにいたのに、ひとことも好きだなんて言ってくれなかったじゃん。

たしかにあたしは無神経で鈍感なところもあるかもしれないけど、何も言わない怜央にも非はあるんじゃないの?

そこまで考えて気づく。


「……言えなかったのかな」


ひとりっきりの部屋で、あたしはポツンとつぶやく。

さっき怜央の口から出た西村というのは、あたしの彼氏、西村太一(たいち)のことだ。

あたし達3人は、中学高校と同じ学校に通っていた。


太一とあたしの交際は長い。

中学に入ってすぐに、あたしのひとめぼれから始まった恋だった。

それから1年半後、中2の秋にあたしから告白して、つきあうようになったんだ。

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