桜*フレーバー
泣きそうになって両手で顔を覆ったその時、そばに置いてあったスマホが音を立てた。


ディスプレイを確認し、タイミングの悪さにドキリとする。


――太一からのLINEだ。


あたしの動揺を見透かされでもしたのかとドキドキしながらLINEを開いた。


【ごめんな。今日は手伝いにいけなくて。引越し終わった?】


本当は今日の引越しは、太一に手伝ってもらうつもりだったんだ。

だけど、用事があるからと断られて。

うちは両親共働きで忙しいし、兄ふたりも仕事だし……。

ひとりでやるしかないなって思っていたところ、怜央の方から手伝いを申し出てくれたんだ。

このことは太一には伝えてある。

あたしと怜央の関係については太一も理解してくれてて、怜央を部屋に入れることを気にもとめていないようだった。


【うん。わりと片付いたよー】


太一からの返事も待たず、あたしはまた文字を打ち込む。


【よかったら明日、こっちこない? 頑張ってご飯つくるし】


お願い、早く……早くきて。太一。
そして抱きしめて欲しい。好きだって言ってほしい。

そう願いながら、彼からの返事を待つ。


< 21 / 50 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop