桜*フレーバー
「怜央くん、お店ですっごい人気なんだって」

「へぇー」

「チップとかすごいらしいよ。怜央くん目当ての女の子も多いらしくて、お客が増えたーってオーナーさん、喜んでたもん」

「まぁ……それは、なんとなく想像できるかな」

「だよね。あのルックスだもんね」


ふたりでうんうんとうなずいていたその時。


「いらっしゃいませー」


店員さんの声がひびき、あたしはつられるように入り口の方に視線をやった。

その瞬間、胸がズキリと痛む。

なんて偶然なんだろう。自分の間の悪さを呪いたくなる。


――そこにいたのは、太一だった。

その横には見知らぬ女の子が寄り添うように立っていた。


ふたりは腕を絡ませ、仲良さそうにこちらに向かって歩いてくる。


こんなの信じたくない。だけど、これが現実なの?

あたしは今どんな表情をしているんだろう……。

保奈美が何かを感じて、「麻衣? どうした?」そう声をかけた瞬間。


太一がチラリとこちらを見て、あたしの存在に気づいた。


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