桜*フレーバー
目を見開き、何か言おうとするように口を開く。

まるで必死に言い訳を探しているかのように。


だけど、この状況で言い逃れなんてできるわけない。

最近あたしからの誘いを断っていたのは、その子に会うため?

あたしの引越しよりも、その子の方が大事だった……?


ダメだ。これ以上ここにいたら気がヘンになりそう。


「ごめん。帰る」


あたしは勢いよく立ち上がる。


とにかくこの場から早く逃げ出したい。

早足で入り口に向かう途中、太一達とすれちがった。

うつむいていたから、ふたりの様子はわからなかったけど、あまったるい香水の香りがやけに鼻についた。

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