桜*フレーバー
翌日。
待ち合わせ場所にあたしが指定したのは、高校生のときに何度かふたりで行ったことのある公園だった。
ベンチに腰掛け彼を待つ。
ここは静かでいい。小さな子ども達が遊ぶような遊具はない。
中央には小さな池があって、それを取り囲むように等間隔にベンチがならべられている。
背後には芝生のスペースがあって、ここからちょっと離れた場所で、家族連れがお弁当を食べていた。
ときおりジョギングをする人が目の前を通っていくけれど、誰もあたしのことなんて気にもとめてないみたい。
ここでちゃんと話をしよう、そう思って姿勢を正したとき。
ジャリと、砂を踏む音がして、くたびれたような表情の太一がこちらに近づいてきた。
「座ったら?」
「うん」
小さくうなずいて、彼はあたしの横に腰掛けた。
「髪型変えたんだね」
「あ……うん」
あたしと会っていない間に、太一は髪型を変えていた。
前はオシャレには無頓着で、いつもスニーカーばっかりだったのに。
今日はデニムをブーツインにしてる。
そういうのも、全部、あの子の影響なのかな……。