桜*フレーバー
花曇
***
最後までカッコつけだったあたし。
その行動にはやはり無理があったようだ。
初めての失恋は自分で思っている以上にダメージが大きかった。
そのことに気づいたのは、帰宅してからのこと。
部屋に入るなり、ベッドに直行。
布団の中で丸まって、声をあげて泣いた。
どうしてこうなってしまったの?
どこでどう間違ったんだろう?
あたしのどこがいけなかった?
もっと早く太一の変化に気づいていればなんとかなったのかな?
4年という長い歳月に甘えてしまったあたしの努力不足?
……ううん、違う。もっと単純な話だ。
あたしなんかより、あの子の方が太一にとっては魅力的だったんだ。
それだけのこと。
自分の存在価値を否定されたような気がして、胸が苦しい。
カラカラに干からびちゃうんじゃないか。そう思うぐらい、後から後から涙がこぼれた。
散々泣いて、泣き疲れて。
いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
目覚めると、あたりが真っ暗になっていた。スマホを確認すると深夜1時だった。
むくりと起き上がり冷蔵庫に向かう。
そういえば、昨夜からほとんど何も食べていなかった。
自炊するつもりだったから、冷蔵庫の中は食材で満たされていたけれど、料理をする気分にはなれない。
ヨーグルトを手に、ベッドに戻る。
スマホにはメール着信のランプが点滅してたけど、読む気にはなれなくて、電源ごと落とした。
今は誰ともかかわりたくない。しゃべりたくない。
無理に相手に合わせて明るいそぶりなんてできないし、かといって、自分のことを聞かれても困る。
太一に振られた惨めなあたしの話なんて誰にもしたくないもん。
なのに、静かな部屋にひとりっきりだというのも寂しい。
テレビでも見ようかとリモコンを手にして気づく。
そういえば、怜央がDVDをいくつか置いていってくれてたな。
袋の中をのぞいて、あたしは「え?」と声をあげる。