桜*フレーバー
「ぶっちゃけ、西村にはムカついてたし。どうせ失恋するなら、早い方が傷が浅くて済むんじゃないか?とか思ってさ」

「あの時、そんな風に考えてたんだ……」

「うん。けど、いざってなったらやっぱダメだった。麻衣を泣かせたくなかった。恋愛なんてどうなるかわからないしさ、西村が女と別れて麻衣と元サヤに納まるなら、オレがしゃしゃり出ることでもないのかな……って」


あの日のことを思い出しているのか、目を伏せ切なげな表情をする怜央にあたしは問いかける。


「……で。魔法使い?」

「そ。とっさに口から出てきたのがそれだった。後に引けなくなって、そのネタひっぱり続けたけど、我ながらアホすぎると思う」

「大丈夫だって。別に信じてなかったし。それにちょっと面白かった」


あたしはクスクス笑う。

一呼吸おいてから、ハァと息を吐き出していう。


「ほんとはあたしも気づいてた。太一とはもうダメなんだろうなって。でも、傷つきたくなかったから現実から目をそらしてたの」

「それもわかってた」

「え?」


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