桜*フレーバー
「ありがとう、怜央」

「ん?」

「あたし、多分大丈夫」

「そっか」


怜央が優しい目であたしを見つめる。

その指先があたしの髪に触れた。


「花びらついてた」


そういって、指でつまんだ花びらをあたしに見せる。


「オレ、もうひとつ告白したいことがあるんだけど……聞いてくれる?」

「え? なに? まだなにかあるの?」


また突拍子もないことを言うつもり?

あるいは、あたしにとってよくないこと?


そう思って、身構えるあたしに、怜央はふわりと笑いかけた。


「12年前の話。小学校の入学式でさ、オレ泣いたんだよね。北海道から引っ越してきてすぐで、周り知らないヤツばっかでさ。今考えると、あの頃はかなり繊細な性格だったし、式の間、吐きそうなぐらい緊張してた。で、校庭に出てクラス写真撮るときになって、ついに限界がきて。涙ポロポロ流して泣き出したんだ。覚えてる?」


そう言って、あたしの顔をのぞきこむ。


「えー。どうだっけ? ごめん、あんまり覚えてないかも……」


自慢じゃないけど、記憶力にはあまり自信がない。


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