桜*フレーバー
「はい、配線完了っと」
怜央がうーんと腕を上げて伸びをする。
もうだいたい片付けは済んでいる。
まだ未開封のダンボールが数箱残ってはいるけれど、すぐに必要なものでもないし、残りはゆっくり片づければいいか。
「お疲れ様。お茶でも飲まない?」
さっき棚にしまったマグカップをふたたび手にして、怜央に声をかける。
お気に入りの雑貨屋さんで見つけた水玉模様のマグカップ。
ふたつ揃いで買ったそれを流し台の上にコトンと置く。
「あ! そうだ! 怜央がくれた紅茶飲もうよ!」
引越し祝いに、と、今朝怜央からもらった箱を取り出す。
包装紙に有名な紅茶専門店のロゴが入っていたから、中身は紅茶なのだとすぐにわかったんだ。
やぶらないようにと、丁寧に包装紙を外していると、いつの間にかすぐ横に怜央が立っていた。
彼に問いかける。
「ねぇ、どんな紅茶にしたの?」
「ん? 開けてからのお楽しみ」
あたしはワクワクしながら箱を開ける。
「わぁ可愛い! え? もしかして、これって、桜?」