桜*フレーバー
銀色の丸い缶に桜がデザインされたピンクのラベルが貼ってある。


「うん。桜フレーバーの紅茶。季節限定だってさ」

「へぇ~。桜かぁ……どんな味がするのかなぁ」


言いながら缶を手に取り、あたしはクスリと笑う。


「なに笑ってんの?」

「いや、なんか。こういうの、怜央に似合うなーって思って」


彼の顔の横に缶をかざす。

うん、似合う。

怜央はこういう可愛いものが似合う男の子なのだ。

小顔で目がクリッとしてて、肌なんてビスクドールみたいにキメ細やか。


ピンクラベルの缶を店で手に取っている怜央の姿を想像する。

きっと周りの店員さんやお客さんは、うっとりした目で彼に見とれてたんじゃないだろうか。


「やーめーろーよー」


迷惑そうな顔して、怜央があたしの手をグイと押し返す。


「全然似合ってなんかないし。っていうか、オレの中ではむしろ、桜は麻衣のイメージなんだけど」

「へ?」


ポカンと間抜けな顔で彼を見つめてしまう。


「あたしが桜のイメージ? ウソだぁ。ピンクとか桜とか、ああいう可愛いものは、あたしとは対極にあるの」


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