バンパイア~時間(とき)を生きる~
プロローグ
バンパイアそれは永遠の命を持ち、魔力を秘め、人間の血をすする生き物。
彼らに血を吸われた者の行く末は二つ。完全なる死か、バンパイアとしての生。
今、生粋のバンパイアの少女が一人。彼女はたった一つ、強く、深く、願っていることがある。
・・・・死だ。
1 プロローグ
キーンと張りつめて、澄んだ空気。あたりは暗く、寒い夜。
陽の光なんてひとかけらも見えない夜‥‥深夜。そこに存在しているものは、無数の星と、青白い光を放つ満月、そして少女。
大気と共に舞う少女。
小さな牙と優しい心とほんの少しの魔力と哀しみで曇った瞳をもつ少女。
彼女は丁度14歳。愛と幸せに満ちているはずの年頃。しかし、彼女の表情には哀しみがあるのみ。
それは消えない。時折哀しみのなかに苦しみの表情さえも浮かべる。
ふと、大気と共に舞っていた少女は動きを止めた。そしてわずかに微笑んだ。
彼女の哀色をした瞳が遠くに何かを見いだしたのだ。彼女のダーク・アイが‥‥。