バンパイア~時間(とき)を生きる~
蓮華の部屋は、薄暗く、暖かだった。これは、勿論柘榴の配慮だ。彼はベッドの縁に腰掛け、彼女の顔をただ、じっと見続けている。部屋のドアをノックする音が聞こえ、父親が
静かにはいってきた。
「まだ眠っているのか?」
父親は柘榴に問う。
「困ったものだな‥‥。蓮華が血を吸わなくなってから四年‥‥どんなに苦しいことか。」
魔力も今年でほぼ尽きる。そして生命を維持することしかできなくなる。そうなれば、本来のバンパイアの役割も果たせなくなるというのに。
父親は蓮華の頭をそっと撫でた。柘榴は黙って父親の言葉を聞いている。
「どうすれば、蓮華は血を飲むだろうか‥‥。」
柘榴にはもうどうしても蓮華に血を飲ませるのは不可能に思えた。
彼女の意識がある限り、決して口にはしないだろう。
青白い頬、細い腕、このまま消えてしまうのではないか、と思えるほど微かな生命の波動。なんとかしなくては‥‥。どんな残酷な手をつかったとしても‥‥。
「柘榴、もし蓮華を一日半死半生の人間と一緒にしておいたら、どうなるだろうか。」
「!」
「蓮華の体は間違いなく血を求めている。こんな小さな子が、体の欲求をそうそう抑え続けられるはずかない。」
いや、蓮華はそれができてしまうんだ。
「オレは反対だ。いくら血を飲ませる方法が見つからないって言っても、繊細な蓮華にそんなグロテスクなものを見せたら逆効果だ。刺激が強すぎる!」
何かきっと方法はある。オレも考えるからそれだけはやめてくれ。蓮華を気遣って静かに話していた柘榴の声が、急に怒りと興奮とで大きくなった。
「しかし、それ以外に方法はあるまい。」
蓮華の指がピクッとなり、瞼をゆっくりと開いていった。
「あ‥‥蓮華、起こしちゃったかな。」
柘榴は言うと、彼女の髪をゆっくりと撫でた。
「どうしたの?‥‥あ。」
言いかけて蓮華は口をつぐんだ。
そうだ、私が血を飲まなかったから、二人とも怒っているのね。また、叱られる!
「父さま、ごめんなさい‥‥。私、今日も‥‥。」
蓮華は覚悟を決めたが、それでも叱られるという恐怖から逃れられない。うつむき、一点を見つめる。肩は震え、布団を握る手に力が入る。
きっと義父親は怒っていて、鋭い刺すような目で自分を見つめている、と思った。それが恐ろしいのだ。それは、この世で彼女が二番目に嫌いなもの。
一番嫌いなものは、無意味に生き続けるバンパイアである自分。
蓮華は義父親の目を見て話せない。
「わかっているだろうな。」
予想通りの、低く、太く、怒った、恐ろしい声。それに予想通りの言葉。震えがとまらない。
「罰をうける覚悟はあるんだろうな。」
静かにはいってきた。
「まだ眠っているのか?」
父親は柘榴に問う。
「困ったものだな‥‥。蓮華が血を吸わなくなってから四年‥‥どんなに苦しいことか。」
魔力も今年でほぼ尽きる。そして生命を維持することしかできなくなる。そうなれば、本来のバンパイアの役割も果たせなくなるというのに。
父親は蓮華の頭をそっと撫でた。柘榴は黙って父親の言葉を聞いている。
「どうすれば、蓮華は血を飲むだろうか‥‥。」
柘榴にはもうどうしても蓮華に血を飲ませるのは不可能に思えた。
彼女の意識がある限り、決して口にはしないだろう。
青白い頬、細い腕、このまま消えてしまうのではないか、と思えるほど微かな生命の波動。なんとかしなくては‥‥。どんな残酷な手をつかったとしても‥‥。
「柘榴、もし蓮華を一日半死半生の人間と一緒にしておいたら、どうなるだろうか。」
「!」
「蓮華の体は間違いなく血を求めている。こんな小さな子が、体の欲求をそうそう抑え続けられるはずかない。」
いや、蓮華はそれができてしまうんだ。
「オレは反対だ。いくら血を飲ませる方法が見つからないって言っても、繊細な蓮華にそんなグロテスクなものを見せたら逆効果だ。刺激が強すぎる!」
何かきっと方法はある。オレも考えるからそれだけはやめてくれ。蓮華を気遣って静かに話していた柘榴の声が、急に怒りと興奮とで大きくなった。
「しかし、それ以外に方法はあるまい。」
蓮華の指がピクッとなり、瞼をゆっくりと開いていった。
「あ‥‥蓮華、起こしちゃったかな。」
柘榴は言うと、彼女の髪をゆっくりと撫でた。
「どうしたの?‥‥あ。」
言いかけて蓮華は口をつぐんだ。
そうだ、私が血を飲まなかったから、二人とも怒っているのね。また、叱られる!
「父さま、ごめんなさい‥‥。私、今日も‥‥。」
蓮華は覚悟を決めたが、それでも叱られるという恐怖から逃れられない。うつむき、一点を見つめる。肩は震え、布団を握る手に力が入る。
きっと義父親は怒っていて、鋭い刺すような目で自分を見つめている、と思った。それが恐ろしいのだ。それは、この世で彼女が二番目に嫌いなもの。
一番嫌いなものは、無意味に生き続けるバンパイアである自分。
蓮華は義父親の目を見て話せない。
「わかっているだろうな。」
予想通りの、低く、太く、怒った、恐ろしい声。それに予想通りの言葉。震えがとまらない。
「罰をうける覚悟はあるんだろうな。」