それでも私は同性に恋をする
少しの間、みかんちゃんが固まる。まぁ、そりゃあそうだろう。いきなり友達にこんなこと言われたら、大抵の人はこうなる。あかりちゃんに会う前の私だってそうだっただろう。同性を好きになるなんてあり得ない。それが世間の、少なくとも私の周りでの風潮だった。
「いきなりこんなこと言われて、びっくりしたよね…。ごめん…。でも私、この気持ちを自分の中にしまっておくことができなくて…。」
みかんちゃんはまだ動揺を隠せない様子だったが、それでも私に言う言葉を見つけたようだ。
「あ…いや…びっくりしたのはしたんだけど…。…ゆずっちは、勇気を出して私に言ってくれたんだよね?それは嬉しい。でも、たぶん私に力になれることなんてないと思うよ。」
「ううん、私は誰かにこの気持ちを吐き出したかっただけなの。みかんちゃんが一番、頼りになる人だから。」
自分でも、何故こんなにみかんちゃんを信頼しているかはわからない。それが彼女の魅力なのだろうか。
「それでゆずっちは。」
そこで少し言葉を詰まらせる。その先を言うべきかどうか悩んだのだろう。
「ゆずっちは、あかりと…その…どうなりたいの?」
突然の質問に私は戸惑う。それは…どうなんだろう。私はどうなりたいの?
「えっと、その…両思いになって、手を繋いだり、その…キス…したり。」
なんて恥ずかしい事を言ってるんだろう。
「それは…。」
みかんちゃんは言うべきかどうか少し悩んだ様子だった。しかし意を決したようだ。
「ハッキリ言うけど…それはかなり難しい。というか、ほぼ無理だと思う。あかりは確かに過剰なスキンシップが多いけど、あれは一種の処世術みたいなもんだし。」
「処世術?」
「そう。みんなの中に溶け込むための工夫。まぁあかりは計算でやってるわけではないんだろうけど…。」
聞けばあかりちゃんは昔は今と違って、おとなしめの子だったらしい。それが中学に入ってから、急にあのような社交的な性格になったのだという。
「だから、まぁとにかく、諦めた方がいいと思う。」
そう…だよね。だって今まで私の周りには、同性を好きだなんて子はいなかった。
「でも。」
「でも、どうしても、絶対にあかりのことを諦めたくないって言うのなら、私は協力するよ。」
みかんちゃんはそう言って、爽やかに笑う。みかんちゃんを相談相手に選んでよかったと思わせてくれる、素敵な笑顔だった。
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