ずっと前から好きだった。
美琴と崇彦が別れたという噂は、一気に美琴たちが通っている高校に広がった。
誰かが、美琴と崇彦の最後のデートを目撃したらしい。
美琴に崇彦から、もう一度話したいというメールが何通も来ていたが美琴は返信しなかった。
1学期が終盤に差し掛かった時、崇彦と樋口先輩が付き合っているという噂を耳にした美琴は、これで崇彦が幸せになってくれればいいと願った。
そして、小阪一家がアメリカへ発つ日が来た。
電車とバスを乗り継いで、空港に着いた。
美琴の父親の健介は、妊娠している娘に重い荷物は持たせまいと、美琴の分まで荷物を持っていた。
「お父さん、重いでしょう?
自分の分くらい自分で持つわ。」
美琴は父親にそう言うが、全く聞き入れてくれなかった。
やがて飛行機に乗り込む時間になった。
エコノミークラスだと思っていた美琴と宙人だが、ビジネスクラスだったことに驚く。
「お父さん、エコノミークラスじゃないの?」
美琴はそう父親に尋ねた。
「ああ、美琴のことも考えて、ファーストクラスには手が届かないから、せめてビジネスクラスでも........と思ってな。」
いつも子供を思ってくれている父親の姿に心が温まり、美琴は笑顔になった。
飛行機が発つ時間になり、機体がどんどん速度を上げていく。
美琴は遠くなる景色を眺めて、さみしく思った。