ずっと前から好きだった。
夏になった。
崇彦たちの学年は修学旅行があった。
崇彦はどの写真も女子に囲まれていたが、仏頂面のままだった。
「ねえ、三村〜!!ほら笑って笑って〜」
そんなことをいう女子を睨みつけて、さっさと歩き出した。
そこへ沙南がやってくる。
「もう、写真のときくらい笑ったら?」
「........笑い方を忘れた。」
崇彦はそう仏頂面に答えた。
「なにそれ、仏頂面で言っても全然笑えないんですけど」
「冗談じゃない」
「まさか本気で言ってるつもり?
崇彦、あんた本当頭大丈夫?相当やられてんな。」
沙南は今まで通り声を掛けるが、崇彦が以前のように笑顔になることはなかった。
「いーかげん忘れたらどう?
美琴ちゃんをいつまで引きずる気?」
「一生忘れられるわけがない。
もう俺はどうでもいい。」
沙南は参った参った、と言って去って行った。