オレ様探偵とキケンな調査
その面会の翌日のことだった。


事務所に鳴海 椿と名乗る女が訪れてきた。


会った瞬間、オレは椿と玲奈を重ねた。


強がった瞳と感情を表さない表情がそっくりの女。


仕事とはいえ、椿に会ったその時、オレは苛立ちを隠せなかった。


涙で潤んでるくせに泣こうとしないその姿。


震える声を押し殺す仕草。


守れなかった、支えられなかった玲奈そっくりの椿を見て、オレは追い詰めてやりたいような、でも守ってやりたいような矛盾した気持ちを心の中に封じ込める手立てがわからず、突き放したくせに傍に置きたい、そんな態度を隠すことができなかった。


「アンタも浮気調査に同行しろ」


「え…」


戸惑うのも当然だ。


誰よりオレ自身が驚いていたのだから。


でも、こらえきれなかった。


ズタズタに傷つけてやりたい。


反面、この女を癒やしてやりたい。


どっちともつかない気持ちで、オレは椿を傍に置き続けた。


オレはこの女に何を求めているのか、それを確かめたくて。
< 104 / 245 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop