オレ様探偵とキケンな調査
日一日と経つにつれ、玲奈とは違う“椿”という存在に、オレの気持ちは大きく揺れた。


髪を切ったその覚悟。


夫と不倫相手を反らすことなく受け入れるその真っ直ぐな瞳。


指示に従い弁当まで作ってくる素直さ。


腕の中で激しく胸を鳴らすいじらしさ。


キスを求め合い、自分で立つと言ったひたむきさ。


どの椿もオレの心を少しずつ、少しずつ溶かしていく。


だけどダメなんだよ。


オレは家族を捨てた男。


何一つ大切なものを守りきれやしなかった、だらしない男。


そんなオレに愛だの恋だのほざける余裕も権利もない。


だからオレは切り離した。


取り戻しつつあるあたたかさを。


無償の気持ちをくれる椿を。


オレは、さ。


そんなカッコ悪い男なんだよ───。
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