オレ様探偵とキケンな調査
「あのさ、椿ちゃん」


「ハイ?」


「なんつーか上手く言えないけど、さ…。社長、待ってると思う」


「…え?」


「ウチらさ、あんな社長初めて見たんだ。ウチもオッサンも事務所の掃除一つやらせてもらえたことなくってさ。社長、机も書類も触られんの嫌がって、信用してくれないっつーか。そんなあの人がさ、笑ったり、椿ちゃんをからかったり、なんか人間らしいトコ見せたのはアンタだけで、さ」


「フフッ…。雑用といいオモチャだったワケだね」


「そっち、片付いたら、戻って来てくれるよね?」


「ううん。あたしは…」


───あたしは一人ぼっち。


涙になりそうで、その言葉を深呼吸と一緒に吸い込んだ。


「待ってるからなっ!」


明美さんの言葉を背中で聞いて、あたしは二度と戻ることのない道をゆっくりと歩いた。
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