オレ様探偵とキケンな調査
何をするでもなく、1秒づつ刻む時計だけを見つめて小一時間、ドアのチャイムが鳴ったけど、あたしは出迎えない。


「椿」


久しぶりに会った信吾さんは、少し太ったように見えた。


部屋の電気をつけた信吾さんは、何の弁解も口にすることなく、いきなりあたしの前に土下座した。


「すまなかった…!」


薄っぺらいその言葉に、あたしは何の感情もわかない。


「その一言で、あたしの2年を取り戻せるの?」


「悪かったと思ってる。長い間、椿を苦しめた。どんな償いもする。でも由香だけは…由香への慰謝料だけは勘弁してもらえないか?」


「なぜ?あたしはずっとあなたが帰って来るのを待ってた。あなたの心にあたしがいないことがわかっていても、それでも毎日、ここで、この家でいつかあなたがあたしの名を呼んで抱き締めてくれる日がくるんじゃないか、って。

バカな女だって、わかってた。だけど待たずにはいられなかった。あたしには信吾さん、あなたしかいなかったから。そのあなたを奪ったのはあの女よ?どうして今更その女に情けをかけなきゃならないの?」


「最初は…ほんの遊び心からくる浮気のつもりでいたんだ。だけど、由香を知る度、その魅力に引きずられてどうしようもなく愛が疼いた。椿に戻るべきだと、何度も思ったさ。だけど、できなかった。由香はオレに…愛を教えてくれたんだ」
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