オレ様探偵とキケンな調査
「ゆっくり食え」


「でも、帯金さんもお出かけなんですよね?」


「オレは今日は昼寝終勤」


「お家にはちゃんと毎日帰ってるんですか?」


「出た、おせっかい。誰も待ってねぇ家に帰って、何の意味がある」


帯金さんは事務所のドアの鍵を閉め、あたしの隣に座った。


「それもそうですけど…。でも、ちゃんとお布団で眠って朝ご飯食べなきゃ、ダメです」


───スッ


お弁当を口に含んだままのあたしの頬に、帯金さんの手が伸びる。


「椿はまた誰かを起こして、朝メシ食わしてやってんの?」


「し、してませんっ」


「知ってる」


「なら聞かないでくださいっ」


「椿本人の口から聞きてぇの」


「ど、どうしてですか…」


「あまりに変わったから。椿、いっつも下ばっか見て歩いてたもんな。調停行く日も、花持って女のアパート行った時もうつむいて歩いてた」


「み、見てたんですかっ!?」


「ずっと尾けてた。椿の笑顔はいつ見られるんだろう、そう思って。安心したかった、他のヤツの前で笑ったりすんな、そう思って」


「帯金…さん…?」


「早くメシ飲み込め。キスできねぇだろ」


「だって…だって、帯金さんは“依頼主をからかうS探偵”でしょ…?」


「もう依頼主でも探偵でもねぇし。ホラ、飲み込まねぇとメシごと吸い尽くすぞ」
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