オレ様探偵とキケンな調査
「でも…お家に鍵はかかってなかったんですか?」


「元刑事で探偵稼業のオレを甘く見んな」


…こじ開けたんですね…。


「帯金さん…?」


「んぁ?」


「あたしね、怖くなかったよ?」


「泣いてたクセに」


「うん。ヤだったけど、でも怖くはなかったの。颯太くん、全部はしない気がしたの。あたしを揺さぶりはするけど、最後まではしない、そんな気がした。それに、ね」


「何?」


「心の中に帯金さんがちゃんといたから」


「犯される寸止めの女が強がんな」


「ねぇ?」


「何だよ」


「好き」


「は…?」


「あたし、帯金さんが、好き」


「オレにも言わせたいワケ?」


「フフッ…。うん、聞きたい」


静かな闇の中、帯金さんが近づくのがわかる。


タバコの匂いのする口元があたしの左耳に寄ると、甘い甘い囁きがあたしの心と体をしびれさせた。


「愛してるよ、椿」
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