オレ様探偵とキケンな調査
「ねぇ、椿さん」


「ハ、ハイ!?」


「寝よ?」


「ね、寝な…い…?」


ポスン、と、あたしの胸に顔を埋めた颯太くんからは、規則正しく繰り返す静かな呼吸。


「颯太…くん…?」


…寝てる。


あ…そうか…この子…。


颯太くん、いつも帯金さんの毒舌を余裕でかわして事務所で勉強してるけど、毎晩遅くまで参考書片手に机に向かってるんだ。


寝不足なんだ、ね?


そんな颯太くんが急に年の離れた弟のようにかわいく思えた。


そっと眼鏡をはずし、ベッド脇のサイドテーブルに置く。


起こしちゃかわいそう。


あたしは颯太くんを抱き、5月の眩しさに目をこすり、そのまま瞼を閉じた───…。
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