オレ様探偵とキケンな調査
しばらく歩く2人の後を尾行して、帯金さんの足がふと止まる。


信吾さん達が入って行った店は。


あたしもよく知ってる見覚えのあるフレンチレストラン。


「ここ…」


「知ってんのか?」


「ハイ…。あたし…あたし、ここで信吾さんにプロポーズされたんです…」


そう。


3月のあたしの誕生日に、豪華なディナーとサプライズの婚約指輪。


あんなに輝いていた思い出の誕生日も。


こうしてくすんでいく。


「辛かったら帰っていい」


怒ったような帯金さんの口調に、あたしは驚いて隣を見上げる。


サラリーマン風だけどそれらしくもないパーマのかかったやわらかそうな髪をクシャッと掻きむしると、帯金さんはレストランの入り口に進んで行った。


ここまで来たら…あたしももう止まれない。


一緒にレストランの店内へ入った。


案内されたテーブルは信吾さん達が見える位置だったけど、帯金さんはあたしに背を向けて座るよう指示して、スマホで2人の楽し気な様子を撮った。
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