オレ様探偵とキケンな調査
「おめでとうございます」


「なーんだ。ボクの負け、か。オッサン、今度こそその大事なモン、失うなよ。椿さん、おめでとう。いいママになってね?」


立ちすくんだままのあたしのお腹に、晃さんの手が優しく触れる。


「オレの子…」


「です、ね…」


「椿」


「ハ、ハイ…」


「産んでくれるか…?」


「え…。いいんです、か…?」


「当たり前だろうが。オマエもこの子も大切なオレの…家族だ」


家族…。


あたしはその“家族”にどんなに憧れていただろう。


信吾さんとは築けなかった“家族”。


でも、こうして愛する晃さんと手に入れられたお腹の新しい命と築けるたった今からの“家族”。


「…っ…っ…!晃さん…っ!」


「バカ。泣くヤツがあるか。子供まで泣き虫になんだろ」


「…っ…っ…うん…っ…!あたし、産むね?明美さんみたいな強いママになるね?」


「椿…」


「晃さん…!」


晃さんはあたしを───あたしとお腹の子をいたわるように優しく抱き締める。


みんなの前で誓った愛は、未来永劫───ううん、きっと来生も。


ずっと巡り巡ってはあたしはこの人と、晃さんと歩んでいくんだ。
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